アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」、厚生労働省専門部会が製造販売の承認を (2023.8.21) 読売新聞
2023年08月21日
厚生労働省の専門家部会は21日、日本の製薬大手エーザイと米製薬企業バイオジェンが開発したアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」(商品名レケンビ)について、製造販売の承認を了承した。病気の原因とみられる物質を脳内から除去することで、認知症の進行を抑える効果が認められた初の薬となる。厚労省が近く承認し、年内にも実用化される見通しだ。
レカネマブは、アルツハイマー病の患者の脳内に蓄積する異常なたんぱく質「アミロイド βベータ 」を取り除き、脳の損傷を抑え、病気の進行を緩やかにする薬。低下した認知機能を元に戻すものではなく、投与対象は早期のアルツハイマー病患者に限られる。
脳の神経細胞の活動を活発にして一時的な症状の改善を図る従来の認知症薬とは、作用の仕組みが根本的に異なる。
専門家部会は、13か国の約1800人が参加した最終段階の臨床試験で、1年半にわたり2週に1回点滴した集団で症状の悪化を27%抑制する効果が確認されたという結果を踏まえ、有効性を評価した。一方、脳の腫れや微小出血などの副作用について、画像検査などでしっかり確認するよう求める意見が出た。
レカネマブは、米国では1月に、中間段階の臨床試験結果を基に「迅速承認」という仕組みで暫定的に使用が認められ、7月に最終段階の試験結果を基に正式承認された。エーザイによると、米国での販売価格は患者1人あたり年2万6500ドル(約385万円)だ。
日本では、エーザイが1月に承認申請し、重篤な病気の薬を対象に審査期間を9か月程度に短縮する優先審査の品目に指定されていた。承認後は、公的保険診療の中での実用化に向け、厚労相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」(中医協)で、薬価(薬の公定価格)が議論される見通しだ。
レカネマブは遺伝子組み換え技術を用いた抗体医薬で、製造コストが高額とされ、日本でも年間百万円単位の薬価になる可能性がある。ただ、高額療養費制度があるため、患者の自己負担は、70歳以上の一般所得層(年収156万~約370万円)の場合は、年14万4000円が上限となる。
エーザイは、日米のほか、欧州連合(EU)、中国、カナダ、英国、オーストラリア、スイス、韓国、イスラエルで承認申請している。